そろそろお役御免だ。
と半年も前に思いつつ、今なお現役で活躍中。
右ポケットの脇には大きな穴が空いてしまった。
ほとんど人に会わないからいいかと、
小さな穴の頃から見て見ぬふりをした結果である。
このままいくとチャイナドレスのようになってしまう懸念。
そこからみえるのは需要のない生足である。
まことに、公に悪い。
公序良俗に反する。
もう5年以上愛用している作業ズボンが限界突破の模様。
ということで今回は、
『作業ズボンが見るに堪えないみてくれになってしまった言い訳をさせて欲しい』
の巻です。
思い起こせば、出会いは飯田市(長野県の南のほう)の古着屋さん。
若者に紛れてフラフラと店内をうろつく。
店員さんに声を掛けられ、仕事で使う作業ズボンを探している旨伝えると、
(きっとその時はワークパンツとかカッコつけて言っている)
「ああ、それならいいのがありますよ!」
といって、山ほどある陳列の中から一本のズボンを持ってきてくれた。
ポロのチノパン。
店員さんは続ける。
「うちの父も大工をしているんですが、チノパンばっか履いてるんですよ」
その一本はウエストがピタッときた。
日本人の古着好き、かつスモールな方々にはご理解いただけると思うが、
気に入ったものでサイズが合うというのはかなり稀だ。
USやユーロからの古着はほぼほぼオーバーサイズ。
その国のミニマムな方々のサイズでやっとこさ合う。
色味もシルエットも好みだった。
加えてコットン100%である。
揃いも揃った条件に迷わず購入。
(背丈相応足が短いので、その場で丈は詰めてもらった)
それからというもの、いつも一番手に選ばれてきたこのズボン。
まるで3歳の子供が突然いつも同じものを着たがるように。
あるいはジョブズやザッカーバーグが毎日同じファッションを好むように。(おい、一緒にするなよ)
他のズボンたちより頭ひとつ抜きん出たローテーションを組まれた相棒。
洗濯終わってるかなと確認されがちな相棒。
ほどなく、その消耗を危惧し始めた。
その座を他のズボンに譲ろうかと試みた。
ディッキーズにレッドキャップ、カーハートも。
いずれもワークウエアには定評があり、名門中の名門だ。
が、足を入れるや否や瞬時に感じる違和感。
その正体はポリエステル。
誰も彼も強度欲しさにポリエステルを含んでいるのだった。
それがどうもいただけない。
どうやら一度コットン100%の心地よさに慣れてしまったがゆえ、
石油由来の化学的な合成繊維が入ってしまうとどうにも肌に合わない。
なるほど、これこそ古着屋さんがチノパンを薦めた理由。
大工の親父さんがチノパンしか履かない理由。
合点承知の助。
というわけで、このチノパンはボロボロで染みだらけだ。
と同時に、愛用品とはこういうことだ、とも気づく。
愛用品を身につけて、愛用されるものをと、今日もコツコツ製作する。
ほんとうに、そう思います。
秋の夜長に。
今日の一冊
「コットンが好き/高峰秀子」