工房づくり番外編。
木工業は木を削ったり磨いたりするのが仕事なので
日々たくさんの木屑や粉塵にまみれています。
エアコンプレッサーはその圧縮空気を利用し埃払いや工具の利用まで何かと重宝します。
私も工房づくりにあたり、ちょこちょこ機械を揃えていったのですが
エアコンプレッサーは2022年2月にヤ◯オク!で落札。
それほど予算をかけられなかったので、使用できれば可という条件で探していました。
落札先は同じ長野県内の下伊那郡大鹿村。先方とやりとりをしたのち軽トラックで直接引き取りに伺いました。
モノの受け取りは特別な理由がない限り、コストをかけても郵送の方が早いしラク。
でも大鹿といえばあの歴史ある民俗芸能大鹿歌舞伎の地。原田芳雄さん主演の映画「大鹿村騒動記」という映画にもなっている。行けない距離ではないし、なんだか惹き寄せられるな大鹿村。
それからもうひとつ脳裏に引っ掛かっていたこと。
ちょうどその時期、長野県の地方紙である信濃毎日新聞の連載記事「土の声を」でリニアを取り巻く現況が書かれていた。地域住民の声にフォーカスし、諸問題に輪郭を与えていくようなもの。そこに大鹿村の住民の声も載っていた。私の住む南木曽町も他人事でなく、この地に来てから7,8年間ずーっとその問題について協議され、工事も進んでいる。やっぱり何か縁があるな大鹿村。
ちなみにその連載記事は先頃本となって出版された。信濃毎日新聞では毎週土曜日あらゆる分野の方々が本を紹介し書評している「本の散歩みち」と題した面がある。「土の声を」は2023年5月27日に先の欄で紹介されていた。ライター、ラジオパーソナリティの武田砂鉄さんが書評を寄せている。この記事は日本ジャーナリスト会議のJCJ賞、新聞労連ジャーナリズム大賞を受賞したらしい。疎い私には初耳の賞ですが、地元紙の記者たちが住民の声を集め、忖度せずに記事としたジャーナリズム精神溢れる内容が当時からグッときていたので、やっぱり!と思った。新聞だけはこれからも届けるべきことをしっかり伝えて欲しい。ちなみにこの面の書評委員のひとりに個人的に気になる音楽家、文筆家である寺尾紗穂さんもいます。
で、ちょっとおぼろげではあるが記事にあった大鹿住民の声の中に「ダンプが4、50台は通る」というようなものがあった。伊那谷から東に位置する大鹿村に行くには小渋川を眼下にのぞむ県道59号を走る。そこがすごいことになってると。それが気になっていた。
そんなこんなで、2022年3月某日、軽トラックに乗り込み南木曽町を出発。阿智村清内路峠を越え飯田市に入る。コンビニに立ち寄っていると先方から電話が鳴る。
「今どのあたりですか。ダンプがたくさん通っていますから気をつけて来てください。うちの近くは迷うと思うので近くまで来たら電話ください」
実際県道59号はダンプの通行量が凄まじかった。道路の幅員が狭く、ガードレールを隔てた先は崖のようなところもあってすれ違いが大変。本当に記事のとおりだと納得した。
どこか気掛かりだったのはダンプのナンバーがほぼ県外で、とりわけ東北地方のものが多いことだった。
トンネルを抜け無事大鹿村に入る。スマートフォンのナビゲーションは優秀で、入り組んだ斜面を登った先にある先方の家に迷わず辿り着いた。
上背6尺はあろう、恰幅の良いおじいさんが出迎えてくれた。
「よくここがすぐにわかりましたねー。さあどうぞ」
つづく
今日の一曲
「まちあわせ/寺尾紗穂」