イチョウの弁当箱

もう、かれこれ5年ほど前のこと。
懇意にしている製材やさんから、イチョウの原木があるから見ないか、と案内された。
見たところ原木はまっすぐで、心も寄っておらず、上々であった、との記憶がある。

イチョウの注意点とすれば、ニオイがキツいものがある(雌木に多いとか?)。
まさに、あの銀杏のニオイである。
学校の、秋のマラソンコースの、ちょうど良いところに落ちている。
(植樹段階で検討を重ねておくれよ)
やっと手に入れた、お気に入りのエアマックスは切に避けたいところだ。

そうして、時に使うあてもなかったが、同行した親方と将来何かには使えるだろうという話になった。
製材後、乾燥のために長いこと桟積みしておいた。


木材としてのイチョウはまな板に使われることが多い。
絶妙な硬さが刃物と相性が良く、適材なのであろう。
余談だが、木工作家界隈ではまな板の、そのカタチが洒落てくると、
名前までがカッティングボードと洒落てくることがある。
まな板とカッティングボードの境界はいったいどこにあるのか。
木工七不思議のひとつだと思う。


そのほか、鮨屋のカウンターにも好まれるという。
木理通直で狂いが少なく、色白木肌美人な点が買われてのことでしょう。
もっとも、空気のピンと張り詰めた、綺麗なカウンターの鮨屋に足を踏み入れるのは、
生涯を通じて両の手で数えるほどだろう。
いや、足して両の足ぶんくらいは暖簾をくぐりたい。

今はもっぱら廻ってくるやつだ。最近は廻っているその上のレーンを特急が運んでくる。
タブレットで注文し、レーンの上をスーッと運ばれてくる寿司を、うどんを、ラーメンを、唐揚げを、フライドポテトを、トロピカルショコラパフェを、食らう。何屋?
いいのだ、子どもたちは喜んでいる。
あの雑多も、それはそれで良い。

ちょっと思い出してしまったので、脱線を重ねると、
そのむかし「アトムボーイ」という回転寿司があった。
その看板は、空飛ぶアトムがクルクルと回転していた。はず。
テレビCMもあった。はず。
まだどこかに、ひとつくらい残っていないでしょうか。
アトムボーイ世代の皆さん、情報いただけたら嬉しいです。



この木で今まで椀やカップを試してみたが、成るには成るがどうも心もとない。
木の柔らかさ、比重の低さからか。
かくして、思いついたように、丸い弁当箱の試作にかかることにした。



つづく




今日の一曲
「スシ食いねェ!/シブがき隊」

 

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